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ふだんのしっかりした様子からは想像できないくらいに、お休みの朝の美幸さんは怠惰だ。
とてもとても長い間布団を出ないで、長い髪をほつれさせて、ねぼけまなこで私を愛撫する。
お休みの前の晩は、そう、やることやっているわけなので、目覚めた私は元気に動き回るということができない。
必然的に、私たち2人の休日はとてもぐうたらしたものである。
でも、腰のあたりのにぶい痛みも、身体のだるさまでも彼女との絆なのだとおもえてしまう。なんて不純な、あいのあかし。
だから私は、お休みの朝がすき。
前の晩に用意しておいたスクランブル・エッグとレタスのサンドイッチ、スイッチを入れるだけでローストされるすこし濃い目のコーヒー。
どれもが美幸さんのためのもの。
そんなことしなくていいのに、と言われるけれど、だって私がしたいのだ。
私は朝ごはんをあまり食べない。私はコーヒーが飲めない。
だから朝はいつもマグカップ一杯の牛乳をお腹に入れるだけ。
でもお休みの日は違う。
嬉しそうな恥ずかしそうな、それでもすこしどこか重たげな雰囲気を纏う美幸さんを満喫するの。
お互いに社会人で、職場もちがうのだから、お休みが重なることなんて、そう滅多にない。
この貴重な一日を、どこまでも無駄に(少なくともそう見えるように)過ごすことは、この上ない贅沢だ。
だから私は、お休みの日がすき。
「冷蔵庫にシュークリームあるよ。食べる?」
そう聞くと美幸さんは小さくうなずいた。
口数が多くないけれど、不機嫌ではないことはたしか。
そしてこんな可愛い美幸さんを知っているのはきっと、私だけ。
頑張ってきた人だ。
頑張れる人だ。
したたかで、たくましく、うつくしい人だ。
だからこそ、こうして無防備な姿をさらしてくれると、ああ、わたしはとくべつ、なんだなぁ、って口元が綻んでしまう。
なんて、ぼーっとしてたら、シュークリームからこぼれたクリームのついた指をぺろん、と舐められた。
したたかで、たくましく、うつくしく。
よわく、もろく、ちいさく。
おちゃめで、いとおしい。
だから私は、美幸さんがだいすき。
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ユキなこ!
砂吐きそうな甘さですみません
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