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砂糖菓子の弾丸(オリジナル百合)

*前奏

月子と陽菜は不思議だ。
もっと彼女たちのことを的確に、具体的に言い表す言葉があれば良いのだけれど、不思議、としか云いようがないのだ。
彼女たちの間にあるのは友情であり恋愛感情であり夢であり、友情でなく恋愛感情でなく幻でない。
月子は存在が浮世離れしているし陽菜は性質が現世に宿っていない。
彼女たちの頭上に広がっているのは確かに紛れもなく空だが、そこには朝も夜もやってはこないのだ。

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*真冬の太陽

「…触って」
陽菜はその春先の温もりを感じさせる名前とは裏腹に言葉の端々に負の印象を纏わせる。
その声は甲高く、そのくせ憂いを帯びていて月子は陽菜を膝に乗せた。
「好きだよ、」
月子は相手を構わずこの言葉を口にする。
それに嫉妬できるような正常な感覚を陽菜は持っていないから、笑って応えた。
「ねぇ、何して遊ぶ?」
この声は妖精を連想させる、と月子は思う。
美しい世界しか見たことのない、架空の美しく哀しく残酷な生き物。
「大好き」
本能のまま、もう一度口にした。
先程と同じように潤んだ瞳で微笑みかけられて
思わず月子も笑みを溢した。

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*堕ちる月光

強い雨が降っている日だった。
いつものように重たげなリュックを気だるげに軽やかに背負って、陽菜はずぶ濡れになっていた。
「ねえ、陽菜今凄く幸せだな」
「月子ちゃんがいて、それでね、あたしには明日がいつまでもあるの」
「―なんて幸せで、酷いんだろう」
黙って傘を差し出す。
月子が雨が降ると陽菜がこんな風に泣くことに気付いたのはちょうど一年前のこの時期だ。
「陽菜ちゃん、風邪ひくよ」
どんなに濡れたって彼女が風邪をひかないことを知ったのは半年前。
それでも、尚このことばをかけ続ける。
朱に染まった唇と真っ白に冷えきった頬のコントラストにも見慣れてしまった。雨の日だけその頬にキスを落とすことを決めたのは、
―さぁ、いつだったか。

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*いつか来るゲームオーバー

月子の手は、冷たい。
陽菜は月子の手が好きだった。
正確には月子の細く長い指に自分の手を絡めてその掌に溺れるのが。
「…愛を、頂戴、」
陽菜は月子が求めるときには自分の出来る最大限を与える。
「勿論」
綺麗に爪を切り揃えられた指―左手の薬指の爪―に口づけた。
月子はもっと我儘になれば良いのに、と陽菜はいつも思う。
自分をいつも子供扱いするけれど、月子の方が余程子供だ。
欲しい玩具を手に入れる術すら知らないタチが悪いくらいに生意気で愛らしい子供。
なんだって「好き」「愛してる」で解決出来るなんて大間違いだ。
だけれど陽菜は月子に対して何も言わない。月子が陽菜に何も言わない限り。
お互いどこかにどうしようもない暗闇―寂しさ?を隠していて、どちらかがそれに触れてしまったときにはきっととても大切な何かが壊れてしまうのだということを陽菜は感覚的に知っていた。
月と太陽が同時に在ることは出来ないのだ。
照らす存在は独りでなければならない。
それでも。今だけはこの世界に浸らせてよ、神様。

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なにがしたかったんだか!

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