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言いたいことはたくさんある。
訊きたいこともたくさんある。
なのに、。
平助の顔を見て、声を聞いて、俺の口から言葉が出ることはなくて、変わりに次から次へと溢れてきたのは涙、だけだった。
こいつは絶対、これで、俺たち3人の世界を終わらせる
そんな確信めいた予感を、言葉の裏っかわに掴んでしまった。
ありがとう、もうこれ以上、一緒にいられない、俺はこんなだから、
痛々しい笑顔に秘められた意味はああなんて優しくも穢らわしいんだろう。
「…ごめん、ごめんね新八っつぁん、そんなに、嫌だった…?」
「…違うよ、嫌、なんかじゃないヨ、お前が、泣かないから代わりに俺が泣くんだ」
平助は泣くことを知らない。
縋ることを知らない。
弱さを知らないから誰よりも弱い。
手に入れることを知らないから誰よりも美しい。
親の愛情、ってもらえて当然なんだよ。
両手の温もり、って心地いいものなんだよ。
こいつは知らないことが多すぎて、いつだって震えていた。
でも、震えていることすら、知らずに、生きていたんじゃないかなあ。
「ねえ、愛されることは、生きることは、罪じゃ、ないんだ」
泣くことは悪いことじゃないんだ。
同じように、笑うことが良いことだとも限らない。
傷つくことも仕方ないと思うんだ。
ただ、それを癒すための方法を、お前は間違ってるよ。
伝えたいことが多すぎて、言葉が、追いつかなくて。
新八っつぁんに頭を、ガッってされた。
優しく、そっと、包み込むように。
小さく囁かれた言葉たちを俺は絶対忘れない。
雑巾持ってきて、床拭きながら、俺を見ないようにしながら、それでもずっと頭を撫で続けてくれた左之の手の大きさも。
2人の体温も。
あのひとが一度もくれなかったそれを、いとも簡単に、こいつらは。
鼻の奥がつんと、なって。
薄い膜を押し破るようにして、生まれてきたそれを止めることはもうしなかった。
幼い頃から奥歯噛み締めて、こらえ続けて。
もう、限界だったんだ。
あのひとはきっとこれからも変わらない。
なら俺が変わってみせるよ。
灰色の部屋は、抱えた孤独は、捨てられない、捨てちゃいけない、と思う。
けれども俺にはこいつらがいるから。
窓を覗けば架かる虹!
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ピスメ処女作というか、いろんな意味で思い出深い作品です
確か高校受験前だから、もう3年前?
懐かしいなー
BGMはおわかりかもしれませんが、BOC"embrace"でした
感想等いただけましたらとてもうれしいです
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